総義歯(総入れ歯)の前後的咬合平面は印象時に決める
総義歯ろう堤作成時の水平的咬合平面設定の目安は以前このブログで書かせていただきましたが、前後的咬合平面(カンペル平面)はどう設定するのでしょうか?前後的な口蓋の形態は人それぞれのため、単純に任意の模型からではこれといった決定法は見出せられません。また、骨格的に何級なのかによって最適な平面角度が若干が変わってきますのでなおさらです。
確実な平面設定の決め手は印象採得時にあります。術者がその患者に対してイメージした咬合平面と平行になるよう上顎印象用トレーを位置することに尽きます。つまり印象用トレーの把持部が前後的咬合平面と平行になるように位置付けをするということです。
これで得られた印象をトレーの把持部(柄(え))がゆか(地面)と平行になるよう意識して石膏を注いで硬化させれば、出来上がる石膏の平面は前後的咬合平面(カンペル平面)を表していることになり、これに平行にろう堤を作成すれば、その形態が大きく外すことはまずありません。石膏の平面は人工歯排列に至るまで大切な指標となるのです。(症例によってはこの石膏の平面からあえて角度をつけることもあります)
実際にところ、前後的のみならず水平的咬合平面の設定もこのやり方で十分決定できるんです。顎堤の形態や吸収状態がどうであれ、あるいは有歯顎で残存歯の挺出状況がどうであれ、惑わされず流されず、常に印象用トレーは咬合平面と平行に位置付けることがより良い補綴装置を作るために印象採得時の必要条件だと思います。