欠損補綴

歯を失うこと(欠損歯列)は、咀嚼機能低下の原因となる形態的な病変のため、それを解決する欠損補綴が必要となります。取り外し式の部分入れ歯や固定式のブリッジ冠やインプラントなど方法はいろいろとありますが、実は絶対的なものはなく、それぞれ一長一短です。当院では、お口の中全体から判断して、失った歯の重要度や、残っている歯や歯肉の条件、そして患者さん自身の年齢や健康状態、社会環境や生活背景などなど、トータルに考慮して決して偏ることなく欠損補綴の種類を選択するようにしています。(実はここが最も大切なのです)

ここでは、同じ左下5番目と6番目の2本の歯を失っている3つのケースを提示してみます。三者三様、欠損補綴方法は違うものの、それぞれがしっかり咀嚼機能を発揮し維持しています。

部分入れ歯
(部分床義歯)
で対応したケース

初診時。左下5番目6番目の2本欠損状態​

歯のない欠損部は取り外し式の部分入れ歯(部分床義歯)で対応

経過の中で部分入れ歯を新しく作り替えましたが10年経過しています。

ブリッジ冠で
対応したケース

初診時。左下5番目6番目の2本欠損のブリッジが入っている状態。支えている歯の状態と適合状態がよくないため再治療となりました。

これまでの補綴方法を踏襲して固定式のブリッジ冠で対応

15年経過時。歯肉が薄い患者さんのため少しやせてきましたが、2本で4本分を構成しているブリッジは問題なく機能しています。

インプラントで
対応したケース

初診時。左下5番目6番目の2本欠損状態。ここに「インプラントを入れてほしい」が主訴でした。

固定式のインプラントによるかぶせもの装着時

13年経過時。大きな問題なく咀嚼機能を維持しています。定期的な検診を継続されています。

総入れ歯(総義歯)について

咬み合う歯がなくなれば、総義歯が有効です。インプラントという選択肢もありますが、患者さんの年齢や健康状態によっては、治療による侵襲軽減や術後対応のしやすさや管理のしやすさなどを考えると、やはり総義歯は優先選択の補綴だと考えています。さらにもっとも簡単な審美的改善の治療でもあります。

総入れ歯(総義歯)で
対応したケース

総義歯新製を希望され来院。歯がない状態での側貌。

総義歯作製の最後のステップである咬合の最終調整。ほとんどの症例を人工歯の排列を含め、私は自分でここまで手掛けています。

総義歯の装着時。機能的回復のみならず、審美的回復にも有効です。

部分入れ歯(部分床義歯)について

総入れ歯と違い、部分的に歯を失ったところを補う取り外し式のものを部分入れ歯(部分床義歯)といいます。この入れ歯は、歯がなくなったからすぐ型を採って作れるというものではありません。もちろん物理的には作れますが、噛める入れ歯にならないのです。

部分入れ歯は、性質の違う「歯肉」と「歯」の両方で支えて機能する装置です。この力のかけ方の塩梅は、かぶせものの中では最も難しいかもしれません。

また、残っている歯の形を考えないと(入れ歯が十分に機能できるような形にしないと)噛むごとに沈んだり横揺れしたりしてしまいます。入れ歯の型を採る前の治療こそが重要になる装置です。

歯を失うと固定式を希望される患者さんがほとんどです。もちろんそうだと思います。ただし、人は年を取っていくにつれ、お口の中にいろいろなトラブルは起こり得るものです。その対処の際に、取り外し式だからこそ、侵襲も少なく短期間で対応できてよかったと思う事も少なくありません。取り外し式は欠点かもしれませんが、確実な衛生管理や術後対応のしやすさなどにおいては長所でもあるのです。

部分入れ歯
(部分床義歯)の比較

上顎の奥歯が左右にわたり、(歯根破折のため)歯を失ったため部分入れ歯をつくることになりました。

まずは取り外し式の入れ歯に馴染んでもらうために歯を抜いた日にすぐ入るよう応急的に部分入れ歯を作りました。ただしこの入れ歯はひっかける針金だけ付いているものですので、外れないですがしっかり噛むことができません。

さらに入れ歯が縦揺れや横揺れしないようなパーツを付けた入れ歯を作りました。これでよく噛めることができるようになります(保険内治療)。

さらに、装着感、強度、衛生を考慮した設計の入れ歯を作りました。よく噛めると同時に、お口の中の快適性や持ちが向上します(保険外治療)。

治療例