2024/02/25

お知らせ&院長のブログ

総義歯(総入れ歯)の人工歯排列〜上顎前歯部編〜

 2021年8月のこのブログで総義歯の人工歯排列に関して書かせてもらいました。今回はもう少し詳しく3回ぐらいに分けて書こうと思います。その時に排列順序として、⑴上顎前歯部→上顎臼歯部→下顎前歯部→下顎臼歯部 と書きましたが、実際私が師匠から教わったのは、⑵上顎前歯部→下顎前歯部→上顎臼歯部→下顎臼歯部でした。石膏模型にロウ堤を上下とも何度も出し入れしながら進めていくと、⑵は徐々に位置関係がズレてしまうことを何症例も作っていくと経験するようになり、その中で最もズレが少なかったのが、先に上顎の人工歯を並べてしまって固定してしまう(=咬合平面が固定される)やり方でしたので、いつの時からかオーソドックスではない⑴バージョンになっていることを追記しておきます。

 さて上顎ロウ堤の基本となる作製方法は以前書かせていただいた通りですが、ロウ堤の前歯部形態付与の拠り所となるのはやはり石膏模型の左右対称なトリミングとなります(写真①緑)。チェアサイドで患者さんの口腔内に装着し、咬合平面の確認とリップサポート(上唇部の張り具合)の確認が必須であり必要であれば修正をして最適な形態にします。特に前歯の歯の位置がどこにあるかで、見た目の印象がガラッと変わってしまいますので重要です。

 ラボサイドでは、そのロウ堤のアーチや傾斜角度に準じて人工歯を中切歯から犬歯まで6本排列します(写真②緑)。その時の川上流としましては、中切歯は自然感を出すために男性なら若干ウィング(それぞれに近心捻転)をつけて、女性なら真っ直ぐ系に排列しています。側切歯は縦(切端の上下的位置関係)と奥行き(歯面の前後的位置関係)の立体感を出すために若干低位舌側転位ぎみに排列します。年齢がまだ若ければより低位にして縦のギャップを大きくし、年齢が高ければ縦のギャップはほとんどないように排列します(写真③緑−1)。犬歯はその存在感を出すために真っ直ぐよりも若干近心傾斜ぎみに排列してこの歯の特徴を強調させるように意識しています(写真③緑)。

 

 以上が上顎前歯部の人工歯排列で心掛けていることです。次回(いつになるかわかりませんが)上顎臼歯部人工歯排列について書こうと思います。